2010年12月27日

流れ星 ~セレンディピティで出遭う方法~

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※この記事は2010年末にフジテレビで放送された月9ドラマ『流れ星』をテキストにしています。御覧になられたことのない方は一度視聴していただくことで理解が深まります。




■セレンディピティとは何か

 健吾は美奈子と別れる前から未来の結婚相手である梨沙と出遭っていました。またマリアに移植が必要と分かる前にもドナーとなる梨沙に出遭っていました。
 婚活女の言い分では見つからないから探してる。探さなきゃ見つからないということでしたが、健吾の場合、まだ問題も起きていないし、探す必要もない段階で、既に梨沙という問題の鍵であり答えをみつけてしまっていたのです。この時点では結果が先で原因が後です。
 
 心理学者のユングはこうした因果関係の逆転現象に度々遭遇することでシンクロニシティ(意味のある偶然の一致、共時性、非因果的連関の原理)という概念を主張しました。物事の因果を考えたとき普通は原因は過去にあります。これは時間は[過去→現在→未来]という一方的な流れしかない「はず」だからです。でもそれは人間の脳が時間をそういうものだと勝手に認識しているだけであって、本当は[未来→現在→過去]といった時間の流れや、今の中に過去も未来も同時に存在するといった時間次元が存在するのかもしれません。そういう別の時間次元に意識が共振した時、意味のある偶然の一致は起こります。

 そしてこのシンクロニシティに気づける能力のことをSERENDIPITY(セレンディピティ)と言います。シンクロニシティは「意味のある偶然の一致現象」を指す言葉であるのに対して、セレンディピティは「意味のある偶然の一致現象に気づける能力」ということができるでしょう。セレンディピティは一般に「何かを探していて偶然に別の価値あるものを発見する能力」であるとか「探していた何かを偶然に発見する能力」と言われますが、私流の解釈では「偶然が介在する」という点が最大のキーであると思うので「意味ある偶然の一致現象に気づける能力」と定義を大きくしてもいいのではないかと思います。

 科学者の偉大な発見においてもセレンディピティの意味するところは大きく、心理学だけでなく脳科学他でも近年、研究がなされています。科学者の場合、仮説を検証しようとする過程で真説や別の価値ある発見をすることが多いようです。でもひとつ勘違いしないで欲しいのはセレンディピティは誰もが持っている能力だということです。一般の人でも使えますし、対象がどんなことでも使えます。より詳しく知りたい方は澤泉重一、片井修 著「セレンディピティの探求―その活用と重層性思考―」をお読みください。

セレンディピティの探求―その活用と重層性思考 (角川学芸ブックス)





■セレンディピティを使うには

 このセレンディピティを使うには具体的にどうすればいいのでしょうか? 月9ドラマ『流れ星』を例にしましょう。 
 健吾はドナーの登場が絶望的な妹・マリアの命を救うためにリスクを冒します。梨沙の肝臓を金で買ったのです。もし健吾がただドナーを待つことを選んでいたのなら、きっと梨沙を見落としていたでしょう。二人はただひとときすれ違っただけの人です。そして梨沙は列車に轢かれて死んでいたと思います。 
 婚活女は見つからないから探してる。探さなきゃ見つからない。と言いました。もちろん健吾だって探していました。だから見つかったのです。でも健吾が探していたのは妻ではなくてドナーです。そして婚活女と決定的に違うのは「The」を探していたのではなく「a」を探していたのです。
 
 健吾には今すぐ解決しなければならない問題がありその解法がわかりませんでした。どんな問題も解法がわからなければ答えは出せません。マリアは故人である父親の不倫相手の子供です。健吾も母もドナーにはなれず、血の繋がった親戚には父親が犯した放埓のせいもあって検査すら断られてしまいました。ドナーを探そうと思っても一八歳未満であるマリアへの移植は法律上ドナーの紹介は優先されません。
 
 そして健吾は婚約者・美奈子にドナーになってくれないかと頼むのですが...もう誰も頼む相手がいなし法律の壁にも阻まれて、もう為す術を無くしてしまったのです。そうこうしている間にもマリアの容態は悪化していく・・・すべての状況がマリアを死に追いやるかのようです。でも健吾は諦めなかった。


『どうすれば今すぐ妹の肝臓移植に適合するドナーを見つけられるのか?』


 健吾は強烈な問いを持ったのです。健吾は愛する妹をみすみす死なせるようなバカではありません。それに何らかの宗教を信じてもいませんから神に祈ったりはしません。現実的な性格の持ち主です。状況が状況ですからやる前から諦めるわけにもいきません。やるだけのことはやった。これ以上は何も出来ないなどと自分には言い訳できても、死を前にした妹に対して言い訳が立つわけがない。だから健吾は諦めなかったのです。
 
 でもどうすればいいのか皆目、見当もつかなかった。だから健吾が探していたのは『未知』のものです。「The」ではなく「a」です。つまり「これ」と具体的に指し示せる唯一の既知ものではなく、「これ」といった条件を設定せず、今すぐ問題を解決できる方法なら、どんな手段でもいいから、一つに限定せずに見出そうとしたのです。答えになんら制限を与えずに「どうすれば妹を救えるのか」という『問い』を持っていたのです。この問いを持ったことで「配偶者ならドナーになれる=梨沙と結婚してドナーになってもらう=その代わり自分は梨沙の借金を肩代わりする」という妙案を思いつくのです。

 ここで幸運だったのは、健吾はリスクを覚悟していたのでどんな方法でも厭わなかったということでしょう。もし保身に走って使えない法律に従っていれば妹を助けられなかったはずです。
 
 しかし、偽装結婚も臓器売買も違法です。でも妹の命が助かるなら自分が逮捕されるくらいどうってことないでしょう? 

 この『問い』『探し方』『リスクを取る』ことによって健吾は、妹の命を救うドナーをみつけることができました。しかもそのドナーは予期せず、どんな苦労も伴にできる最高の伴侶でもあったのです。そしてこの事態を見越していたかのように健吾と梨沙は既に出遭っていました。まるで最初から何もかも決まっていたかのように。

 これだけ幸福な偶然が続くと元々『運命は決まっている』と思えませんか? あるいは幸運の女神様がいて、その女神様は、自分はリスクを取らずに願い事やお祈りをするご都合主義の強欲な人間は一切相手にせず沈黙を貫ぬいている。しかし、逆に無我の「問い」を発して「リスクを取る」者にだけは偶然を使って「幸福な解答」をプレゼントしてくれる・・・、そんなふうに私は夢想してしまいます。
 
 たしかにこれはドラマの話です。現実に起きたことではありません。でも健吾がセレンディピティを使ったことだけは確かです。


■健吾がセレンディピティで問題解決したポイント

 ・問題に対して願望や祈りではなく具体的な問いを持つ
 ・その問題を解決したいのは自分のためではなく人のためである
 ・問いは現実を正確に認識した適切なものである
 ・解答の期限が差し迫っており猶予がない
 ・解答に対して、それが導きだされる前に期待を抱いたり、何らかの制限を設けない
 ・解答に対して一切のリスクを厭わない


 すなわち問いと解答に対して無我であり客観的でゼロベース。それは論理思考の基本と同義。

‘もし自分が殺されそうになって、助かる方法を考えるのに1時間だけ与えられたとしたら、 最初の55分間は適切な問いを探すのに費やすだろう’

 と、アイシュタインが言うように適切な問いを立てさえすれば、適切な解答は自ずと導かれるということ、です。
 

 

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posted by 駿喆咲道 at 19:09 | TrackBack(0) | SERENDIPITY ~セレンディピティ~ | 更新情報をチェックする






■恋愛にも新規顧客開拓にも使える出遭いの教科書
■著者
駿喆咲道@suntetusakudu

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1978年生まれ、東京都在住。「人間とは何か、私とは何か」をテーマに、実存と人間関係の悩みに光を注ぐことを使命にしています。尊敬する人は『夜と霧』の著者 V.E.フランクル(ロゴセラピー)です。

私は常に「道」を求めて開発改善に努めています。それゆえ記事の投稿後も何度も推敲を繰り返します。それにより読者に損害が生じることは恐らくありませんので御安心ください。

なお、毒舌、エスプリ、おやじギャグ、スラングなどを用いたり、テキトーな言葉遊びによって人を煙に巻くような話をすることがあります。下ネタを発することもあります。その旨、ご注意ください。


I produced this template on August 29,2017.


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