流れ星 ~恋愛の真価は心の傷を癒し合うこと~

2010年12月29日

流れ星 ~恋愛の真価は心の傷を癒し合うこと~

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 健吾と梨沙の出遭にはいくつか注目すべき点があります。今回は健吾の側から見てみたいと思います。

 健吾が梨沙に初めて出遭ったとき健吾には美奈子という婚約者がいました。このとき健吾と美奈子の関係は結婚を目前にしている段階でした。

 通常恋愛は以下の段階を踏襲します。


①ロマンス期
自らの持てる愛、やさしさ、ユーモア、快などポジティブなものだけを与え合う時期。

②権力闘争期
トラウマを癒すために、二人の関係に投影して再現する時期。

③疲労倦怠期
疲労と諦めの時期。ただし権力争いにおいて傷が癒されれば倦怠期はない。

④共同創造期
壁を乗り越えて揺るがない信頼を確立したことを確かめる時期。


 自分の持てる愛を与え合うロマンス期を過ぎると、もう何もあげるものがなくなります。すると心のなかには自分の過去のトラウマや苦しみだけしか残っていません。このトラウマは二人の関係に投影され再現されます。これは傷を癒すために無意識に行われることです。3~4歳頃の自分の親の記憶を相手に投影し合うのです。
 
 3~4歳の頃というのはそれまで何でもわがままを聞いてくれていたのが、一転して、社会性を身につけさせるための本格的な教育が始まる時期です。この頃から「やってはいけないこと」が増えていくのです。公共の場での振る舞い方から箸の持ち方、排泄のコントロールまで「人間になるための元型」が仕込まれていきます。こうしたトレーニングが始まると子供は社会に適応するためではなく、親に見捨てられないように自分を規制して行きます。親の顔色を伺いながらやって良いことと悪いことをルール化していくのです。フロイト的心理学ではこのルールが人間の潜在意識となり如何なる時も行動の規範となってゆくと言います。このルールにはその形成過程で生じた感情や思考が『観念』として付録されています。通常の記憶とは違うので自分では意識できませんが、似たような状況になると『観念』が反応して付録されている感情や思考を意識に自動で生じさせます。これがトラウマの正体のようなのです。

 権力闘争期に入りトラウマの再現劇が始まると二人の関係に影が差し始めます。相手に投影された「わがままを聞いてくれなかった親」に対して、いい子でなければ愛されないという条件付きの愛によって、常に見捨てられる恐怖に苛まれた自分の怒りや悲しみが湧いて起こるのです。ですからこの権力闘争期には、相手にムカつきや不満や不安や見捨てられるような恐怖を覚えたりします。相手が本当に自分を愛しているのか疑ってしまうのです。そして愛が本物であるのかを試すような「演技」や「お試し」が無意識に始まります。
 
 自分でも理由がわからず不機嫌にしてみせたり、約束を破ったり、浮気をして裏切ったり、ありもしない被害を捏造し加害者に仕立て上げて罵ったり...、あらゆる罠を仕掛けては愛と信頼を試すのです。このとき二人はそれが投影された自分の心の傷の幻影だということを理解しなければなりません。一つずつ二人で協力して癒し合っていくのが正解なのです。ですが恐らく、これを読んでいる人はこのような発想を初めて聞いたでしょうし、意識できませんから、当人たちは互いに相手に問題があると思ってしまいます。だから被害者である自分の正当性ばかり主張し、責任をなすりつけ合い、傷つけ合ってしまうのです。

 この期間をうまく乗り越えられないと二人は諦念に支配され倦怠期に陥ります。自分のトラウマをわかってもらえないばかりか、却って傷つけ合って疲れ切ってしまうのです。

 そうして大概のカップルはこの段階で別れてしまいます。ロマンス期のうちに結婚してしまった夫婦は権力闘争期をずっと続けていることも多いです。ケンカばかりしている夫婦はその典型です。これは巻き込まれる子どもがかわいそうです。
 
 権力闘争期で、その相手個人のせいではなく自分のトラウマが投影されたものだと理解して癒し合えれば倦怠期はやってきません。その場合、共同創造期への移行、つまり何があっても揺るがない信頼を確立できるのです。


 以上を踏まえた上で健吾と梨沙、健吾と婚約者・美奈子の関係を見てみましょう。健吾は美奈子と結婚を決めていましたが、妹・マリアの移植手術という問題が生じた時に脆くも破局してしまいます。学生時代から交際していた二人はおそらく「疲労倦怠期を乗り越えるため」に結婚しようとしていたのです。本当は疲労困憊していた美奈子に、マリアのドナーになって欲しいという要請はとても飲めるものではなかったのです。

 まだ私は健吾(に投影した幼い時の父親)に何も癒されていないのに、こんなに傷ついている私の肝臓をよこせと言うの? 健吾が私の要求を実行して癒すのが先でしょう! やっぱりあなたは私を愛してなんかいないのね・・・。

 そして健吾も美奈子に「記憶の中の監督者としての母」を投影して、同じように「やっぱりお前は自分を愛してなんかいないんだ」と思ってしまったのです。
 
 こんな風にトラウマは自分を被害者にし相手を加害者であると思わせます。こうして二人は別れるより仕方なくなってしまいました。否、こうなるよりもずっと前にもう二人は結論を出していたのです。しかも美奈子との破局はマリアへの死刑宣告でもありましたから、二人は関係を修復することは絶対にできないと思います。だから健吾は梨沙との愛にすぐに移行できたわけです。
 
 健吾と梨沙の関係はいきなり②権力闘争期から始まっています。これはふたりとも命の危機に陥っていたからです。健吾は肝臓移植の必要なマリアの命を救わなければならなかったし、梨沙は自分の運命を呪っていて死のうとしていました。そういうふたりですから①のロマンス期もへったくれもありません。ふたりはいきなり自分のトラウマを曝け出しています。お互いが抱える問題を克服するためにはお互いを信頼し合うより他なかったので、助け合えたのです。偽装結婚で肝臓を売買するという共犯関係になったのも結果としてよかったのだと思います。お互いに自分たちの未来を相手に賭けるしかないからです。これによりふたりは②権力闘争期を乗り越えました。③疲労倦怠期をすっとばして④共同創造期にすんなり入ってしまったのです。
 
 恋愛の真価はちちくり合うことではありません。結婚でもありません。心の傷を癒しあうことです。



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※この記事は2010年末にフジテレビで放送された月9ドラマ『流れ星』をテキストにしています。御覧になられたことのない方は一度視聴していただくことで理解が深まります。

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posted by 駿喆咲道 at 19:27 | TrackBack(0) | 恋愛心理考 | 更新情報をチェックする

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■恋愛にも新規顧客開拓にも使える出遭いの教科書
■著者
駿喆咲道@suntetusakudou

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1978年生まれ、東京都在住。「人間とは何か、私とは何か」をテーマに、実存と人間関係の悩みに光を注ぐことを使命にしています。尊敬する人は『夜と霧』の著者 V.E.フランクル(ロゴセラピー)です。

私は常に「道」を求めて開発改善に努めています。それゆえ記事の投稿後も何度も推敲を繰り返します。それにより読者に損害が生じることは恐らくありませんので御安心ください。

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I produced this template on August 29,2017.


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